March 2026
舞台は、ゴールデンゲートパークの閉ざされたトンネル。 もともとはJFK自動車道の下をすりぬける歩行者連絡通路だったが、JFKが歩行者空間となったことで、 その役目を失ってしまった。いまでは両端を鉄格子で塞がれ、誰も通り抜けることはできない。
そのトンネル手前の段々で、毎週末の昼どきになると、 三人のおじさんがジャズを演奏している。ギター、サクソフォーンとドラム/フルートのトリオはこちらに背を向け、トンネルへ次々と音を送り込む。
放たれた音たちは、トンネルの壁へ飛びつき、跳ね返り、また別の壁へ。そうして何度も弾みながら、20メートルほど先に見える出口へと行進していく。その足取りは軽やか。
あんなに楽しそうに、音たちはいったい誰に会いにいくのだろう。トンネルの先には雪国が広がっていたり、湯婆婆がいたりするのかもしれない。 音たちがうらやましい。