Manaka Hataoka 




朝と霧
December 2025
目を覚ます。カーテンを開ける。どこもかしこも真っ白だ。

こうして朝に出会う霧が、私は好きなのだ。

白い粒子達が空気に身を委ねながら左右上下に漂っている。その漂いはときに押しつぶされ、ときに伸ばされ、濃淡を作り出す。

白が淡くほどけたところから、日常の窓景が見え隠れしている。手前には街路に並ぶアカシアの木々、向かい家のカーテンや照明、観葉植物がちらつく。目を凝らすと、大聖堂、スートロタワー、ツインピークもおぼろげ見えてくる。やがて、先ほどまで見ていた夢の断片までもが、現実の窓風景に紛れ込んでくるのである。

漂う粒子たちによって風景はばらばらになり、ずれずれになり、ごたごたになってしまったのだ。順序も秩序もない。

そんなとき、ふと安部公房が『砂の女』を考えた。
“砂は決して休まなかった。優しく、しかし確実に大地の表面を侵し、破壊していった。”

すると、今まで幻想的だった霧風景が一変する。終わりなく流動し続けるものが孕む脅威性に胸がざわつく。

やがて朝が終わるころ、白い粒子達は去り、太陽が顔を見せる。そして、朝の霧を恋しく思うのである。
Red Desert | Michelangelo Antonioni
Fog×Beach | Fujiko Nakaya
The Circus in the Mist | Bruno Minari



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