October 2025
事務所からワシントンスクエアへ向かう道中、ふと妙な感覚に襲われることがある。横目には、街区の切れ目ごとに、傾斜の急な上り坂が繰り返し現れる。それらは、見事な湾曲でせりあがっている。今にも、ぺりぺりとその坂はめくれ上がり、我々をのみこんでしまいそうだ。それは映画『インセプション』でみた現実と夢が入れ替わるシーンを彷彿させる。
その2| 鎮守の森と参道
自宅から少し歩くとBaker Streetに出る。住宅街にあるその通りは、街路樹が豊かで、緩やかな勾配で下り坂を経たのち、途中で上り坂に切り替る。起伏しながらもまっすぐに伸びるその道の先にはずんぐりとした丘が鎮座する。サンフランシスコの格子状街路に無頓着なその丘は、どこか鎮守の森を思わせ、心落ち着く。緩やかな勾配のせいだろうか、街路の直線性が際立ち、 丘の神聖性が増す 。まさに参道を歩いているようで、丘の麓には鳥居までもが見える気がする。
その3 | 切り取られた夕焼け
サンフランシスコの夕焼けは美しい。それらを海辺や丘の上の視点場から眺めるのも素敵であるが、街路を歩いてて不意打ちに出会う夕焼け空ほど心打つものはない。低層の建物と上り坂で切り取られた夕焼けは紺青から橙色へ向けて完璧なグラデーションを作り出す。